目は悪くない。むしろ良い方だ。本来眼鏡をかける必要性は全くないのだろう。
だからこそなのか、お洒落に眼鏡をかけている人に憧れがあった。
でも、「自分は眼鏡が似合わない。」そう思っていた。
コロナ禍、給付金10万円が入った時に思った、「そうだ、これ全部つぎ込んで最高の伊達眼鏡を買おう」。
予算は潤沢。向かうは表参道。予定は丸一日空けてある。
調べておいた眼鏡屋さんに朝から向かう。が、やはりなかなか似合う眼鏡は見つからない。
5店舗目か6店舗目か。試着した眼鏡は50本を越えたあたりだと思う。
そこで入ったのが「オリバーピープルズ」という眼鏡屋さんだった。
いかにも高級な内装。余白を大事にしているのか、ゆったりと眼鏡たちが並んでいる。
諦め半分で試着した時に感じた。
「あれ?顔がシュッとして見える」。
驚いた、眼鏡で顔の形が変わって見えるのだ。
本当に良い服が、なんの知識も必要なく、着た瞬間に「なんだかいい感じ」とわかるように、本当に良い眼鏡もかけた瞬間にわかるものだった。
かけたり外したりして、しばらくその騙し絵のような状態を楽しんだ。
その時には、もう、その眼鏡を買うことは決まっていた。
オリバーピープルズで満足いくまで試着をし、腕時計との合わせも考えて、選んだ眼鏡は黒のフレームに金のもの。
目が悪くなくても、純粋にお洒落のために眼鏡をかけるのも、たまには許して欲しく思う。