昔から、職人の手仕事みたいなものに憧れがある。
というか何か一つのことを突き詰める職人という生き方、姿に憧れる。
自分はどちらかというと移り気、飽き性、多趣味なタイプで、いろいろなものに手を出しがちだった。
螺鈿もそんな好きなものの一つ。
貝から手作業でカケラを切り出して、それを漆の木の上に貼り付ける。
職人の作業している動画を見たことがあるが、気が遠くなりそうな作業の多さと細かさだった。
ある日、SNSでお知らせがあった。
普段から見ていた、若手の螺鈿職人さんが池袋で個展をやっているよう。
ぜひ実物を見てみたいと思っていたので、喜んで出かけた。
きちんと調べずに行ったけれど、様々な種類の職人さん達が集まるフェアのようなモノだった。
その壁際のブースで、そんなに大きくない机に、黒の布を敷き、その上にネックレス、ピアス、リング、ブローチ、ネクタイピンなど、たくさんの螺鈿商品が所狭しと輝いていた。
小ぶりで、でも存在感のある薔薇モチーフのひし形のネックレスが気になった。
螺鈿は天然の貝殻のカケラと漆を塗った木材からできている。
そして、貝殻は切り出す箇所によって、ピンク、赤、緑、青など無数の色がある。
そのカケラが合わさって、一つの作品が形作られるのだ。
だから、一つ一つに個性と表情がある。
裏の在庫まで全部出してもらって、7,8個くらいを見比べた。
さすがに男なので、ピンクや赤に寄ったネックレスは少し抵抗がある。
緑と青が多く使われているように見える螺鈿のペンダントを一つ選んでお迎えすることを決めた。
職人の、一つをずっと突き詰める手仕事を感じながら、自分は自分で色んなことを試し挑戦する道を進む。