人の仕事に「ここまでやるのか…」と感動したことはあるだろうか。
そのような仕事のプロセスと、それにより出来上がる成果を見たことがあるだろうか。
アートディレクターの吉田ユニさんのトランプはまさにそのような成果だった。
吉田ユニさんを初めて知ったのはユニクロのTシャツだ。
いろんな要素を組み合わせて騙し絵かつユーモラスかつ洒落た感じで「ミッキー」を作っていた。
このミッキーには黒の「花束、帽子、トイプードル、ハシゴ、ワンピース」などが使われている。
さてトランプの話である。
トランプは絵柄12枚、エース4枚、数字36枚、ジョーカー2枚の計54枚で構成される。
吉田ユニさんはこれら全てを騙し絵で構成したのだ。
ハートのエースは表地が白で裏地が赤のワンピースをはためかせてたまたまハートになった瞬間を撮影したもの、ジョーカーは幾つかの果物や野菜を切って並べてジョーカーの形にしたものだ。
個人的にはスペードの5が好きだったりする。下二つのスペードがトイプードルのお尻なのがかわいい。
スペードのキングは食事会、クラッカーやナイフ・フォーク、ナプキンやブドウなどが合わさって、なぜかトランプのキングの柄に見えるようになっている。
54枚全てこの調子である。想像しただけでもとんでもない作業量になるなと感じていた。
ラフォーレ原宿で開かれた個展では、メイキングの一部を動画で見ることができた。
そのメイキングが、圧巻だった。想像した10倍は大変だった。
54枚あるうちの1枚を撮るのにここまでしなければならないのかと驚き、アイデアと実現というプロセスを54枚やったことに驚き、トランプの裏面の花びらを手で1枚1枚並べ、全体を見て気に入らないと直し、それを何度も繰り返すことに驚いた。
このメイキングを見て、仕事に込めるエネルギーを感じられただけでも、個展に来た甲斐があった。
とにかく、途方もないエネルギーが1つのトランプに詰め込まれていた。
こんなにも丹精込めて何かを作っている人がいるんだと知ることができた。
少しでもあのエネルギー思い出したいと、仕事机にこのトランプを置いている。
果たして自分はあの1/10でも、日々頑張れているだろうか?と。